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まる子ムの生息地です。本読んだりゲームしたり。

「やさしい手」番外編

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=10420513 のサイドストーリーです。
こっそりとアップ。900がキャラ崩壊しているかもしれません。ご注意ください。







「で、どのジャンルにするのか決めたか?」
「あのさぁ、マジでこの中から選ばねぇとだめなの?」
「そうだ」
「なんで普通のに応募しなかったんだ」
「『アブノーマル部門』での応募の方が、受賞の確率が二十パーセント上がる」
「別に受賞なんかしなくてもいいじゃねぇか。撮れればお前は満足なんだろ」
「賞品のローションが欲しい」
「なんでだよ! 普通に買えば……」
900がじっとギャビンを見つめると、彼は気まずそうに目線をそらせた。
「あー……、お前なりの仕返しか……?」
「仕返しとは人聞きの悪い。私は自分の給与口座をお前に差し押さえられている。現実的な入手手段のひとつとして言っているだけだ」
「そういう発想になるのが驚きだわ……最新型のアンドロイドこわい」
「では、私の口座を返してくれ」
「だめだ。わけのわからねぇアダルトグッズ購入に給料を注ぎこみやがって……しかも全部、俺に使う用の! おまけに配送先を職場にするなんて、クレイジーにも程がある。コナーのあの不審そうな顔見たか? 絶対ばれたぞ」
「コナーには、あれは乾電池だと言っておいた」
「乾 電 池」
ギャビンが椅子からずり落ちそうになった。900はそれを無表情で見下ろした。
「と、とにかく、お前がちゃんと自分のために金を使えるようになるまで、俺がお前の給料の管理をするって決めたんだ。必要なものがあるなら買ってやるから、その都度言え」
「では、a◯e社のシリコン製コックリングが欲しい。買ってくれ」
ギャビンが椅子からずり落ちた状態のまま、顎先を蹴ってきた。寸前のところで避けて、ギャビンの足首をつかんだ。顔が怒っている。
900は足首をつかんだまま、ジーンズと靴の間からのぞくくるぶしをべろりと舐めた。
「うわっ」
「そんなことよりも、応募するポルノサイトの話だ。どれにする」
ギャビンの足首の筋を舐めながら訊いた。
「馬鹿野郎! だれか来たらどうするんだ」
ギャビンが足をバタつかせるが、離さない。
「『ハイヒール』? 似合うと思うが」
「絶対に嫌だ」
「『ウェット&メッシー』? 水濡れは普通すぎるから、チョコレートや生クリームを塗りたくるのもいいかもしれない」
「……吐き気がしてきた……」
「『ブラッディ』? 本格的な連中は、豚の血を使うそうだ」
「ヤバイ」
「では、『ブレスコントロール』か?」
「とりあえず、離せ」
900はギャビンの足を離した。
「消去法でいくとそれしか無いだろ……ブレスコントロールって、頭からビニール袋被ったりするやつだろ? めちゃくちゃ危ないやつじゃん……」
「アンドロイドはリアルタイムで人間のバイタルサインを見れるから、人間同士でやるよりもはるかに安全だ」
「そうなのか」
「道具を使うのが不安なら、素手でも十分できる」
「それなら出来そうな気がしてきた」
「決まりだな」
900が言うと、ギャビンは椅子に座り直した。
「普通のセックスより少し苦しいぐらいだろ。反撃してきた容疑者に首絞められたことがあるんだ。一瞬だったが。それに比べりゃ余裕だろ」
ギャビンが得意げに笑った。
「そうだな。目の肥えた特殊プレイ好きの視聴者を唸らせるほどのものを撮ろう」
「おう。ちょっと楽しくなってきた……!」
少しテンションが高くなったギャビンをじっと見つめていると、彼もこちらを見返してきた。唇を近づけると、目を伏せた。
「おいお前ら、そういうことは家でやれ」
ギャビンが弾かれたように900から離れた拍子に、大きな音を立てて椅子ごと後ろへ転がった。後ろを振り返ると、タブレットを片手にベンが無表情で立っていた。