CF班

まる子ムの生息地です。本読んだりゲームしたり。

ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー/ダニー・ストロング/2019

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近くの映画館まで行ってきましたが、私ひとりだけで上映でしたよ…公開終了間際だからなのか?めちゃくちゃさみしかったです 汗


J・D・サリンジャーは、世界的ベストセラー『ライ麦畑でつかまえて』の著者です。16歳のホールデンが高校を退学になり、ニューヨークへ彷徨う数日間の物語。

攻殻機動隊S.A.Cで、トグサが野崎孝訳の本著を投げ捨てるシーンが出てきます。


主演のニコラス・ホルトは、『シングルマン』のあの印象的な生徒の役の人でした。めちゃくちゃ美しいイケメン…そして『ボヘミアンラプソディー』のメアリーの女優さんも彼の妻役で出てました。

 

映画自体は、サリンジャーの作家としての孤独と苦悩を追っていく伝記でした。

20歳で作家を夢見てコロンビア大学で創作を勉強しはじめ、短編を書き続け、雑誌不掲載を何度もくらい、そして戦争へ行く。

驚いたのは、サリンジャーが戦場にまでも原稿を持っていき、ホールデンの物語を書き続けていたということです。あの物語のうしろにリアルな暴力があったと知って、衝撃を受けました。


「泣いた」という感想は最上級の褒め言葉であるとともに、いろんな表現を集約する機能のある言葉だと思っています。だからなるべく「泣いた」を使わずに感想を書きたいのですが…

とにかく「泣いた」としか言葉が出てきません! 笑

なぜなら、映画を通して語られるホールデンの言葉で、この本を読んだときのことが鮮烈に蘇ってきたから…


高校2年。2限目の数学の授業がとにかく嫌で、朝家を出て学校へ行かずに湖岸のベンチに座ってサボってたんですよ。なにしろ不真面目な学生だったので…とにかくクッソ寒かったことを覚えています。

とりあえず鞄に入っていた野崎孝訳の『ライ麦畑でつかまえて』を読むわけです。時間はたっぷりある。目の前にはバス釣りをしてるおじさんと、たまたま自転車で通りかかったパトロールのお巡りさんが2人で喋っている。制服着て学校へ行かずになにしてるの?とか声をかけられないかドキドキしたりして(笑)サボりはするけど度胸はない…

結局お巡りさんに声をかけられることなく、再び本を読む…

「僕が何になりたいか教えてやろうか?」

(中略)

「とにかくね、僕にはね、広いライ麦の畑やなんかがあってさ、そこで小さな子供たちが、みんなでなにかのゲームをしてるとこが目に見えるんだよ。何千っていう子供たちがいるんだ。そしてあたりには誰もいない──誰もって大人はだよ──僕のほかにはね。で、僕はあぶない崖のふちに立っているんだ。僕のやる仕事はね、誰でも崖から転がり落ちそうになったら、その子をつかまえることなんだ──つまり、子供たちは走ってるときにどこを通っているかなんて見やしないだろう。そんなときに僕は、どっからか、さっととび出して行って、その子をつかまえてやらなきゃならないんだ。一日じゅう、それだけをやればいいんだな。ライ麦畑のつかまえ役、そういったものに僕はなりたいんだよ。馬鹿げていることは知っているよ。でも、ほんとになりたいものといったら、それしかないね。馬鹿げてることは知ってるけどさ」

このホールデンの言葉、映画にも出てきました。

17歳まる子ムは考えました。世界はもっと広い…のか? 数学の授業がいやだというのも、実はとても小さい通過点でしかないのかもしれない…?

本を閉じて、そこから学校へ行きましたよね(笑)そしてやっぱり、どう頑張っても数学の成績はいつでも『1』でした。


映画のエンドロールが流れ始めたとき、ホールデンの声が “自分” を構成するものの一部になっていたのだ、ということに気がつきました。何年も経って忘れていたはずなのに…よくわからないけれど、それがとても嬉しくて泣きたくなりました。


本を読んだことがある人は、ぜひ映画を見て欲しいと思いました。内容を忘れていても大丈夫です。ホールデンの方から飛び込んできてくれるから!

また、まだ読んでいないという人も、ぜひ映画を見てから本を読んでみてほしいです。

たとえ、あなたがもう子どもでなくなって、いろんなものを見て汚れてしまって、 “無垢” でなくなっていたとしても…

きっと、自分の中の終わりのない青春を見つけることができると思います。


本当に素晴らしい映画でした。ひとりぼっちの上映でも、行ってよかったです。