言壺/神林長平/2000
- 作者: 神林長平
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/06/10
- メディア: 文庫
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9つの短編から成る、「言葉」に関する物語。言葉について、考えてみれば当たり前なんだよなぁ、そうだった、そうだった、と、改めて思い出させてくれるような話たち。
短編の中の『栽培文』は、言葉の木を切り出して売る樵(きこり)の話。実態のない言語感覚を鮮やかに、美しく映像化してしまう著者の手腕に本を持つ手がふるえた。
人はいつの時代でも、言葉をうまく使いこなさなければならない。なぜか。人はひとりで生きられない存在だから。集団の中で意思伝達をすることで生存することができる生物だから…
以下、自分のための覚え書きなので、意味不明だと思います。
われわれの通常の言語空間で理解しようとすると、こちらの言語空間が崩壊していくような気分にさせられる
言葉が現実を構築する
・綺文
「わたしを生んだのは姉だった」
異様な一文を仕掛ける。それはウイルスのように世界にばら撒かれる。世界はそのように変容した。理解できなければ、狂っていると言われるだけ。
・似負文
作家には、「言葉と戯れることが楽しいという能力」が要る。
言葉は肉体に作用を及ぼす
「一言で言うならば、言葉は自走する、ということだ。それを書き手は制御しながら、書く」
→言葉は自走する!!!なんというパワーワード。
「絵でもそうだろう。異なる表現媒体には、それぞれ独自の自走性があり、使い手はそれを制御する能力が必要となる」
シムステイム、擬験
ニューロマンサー読まなあかんな!ギブスンギブスン。
・被援文
長尾が死んだ
「つまり、わたしが表現したいものは、本来言葉にならないものなのだ」
「核になるものはわたしの場合、言葉ではなく、非言語的な想いであって、表現したいことははっきりしているものの、言語ルールにはもともとのせることができなくて、書いているうちになんとなくそれに近づいてくるのをよしとするものなのだ。」
言葉を固定すること
ワーカム・モデル9200
ワーカムは神秘ではない。ただのマシン
わたしがただの人間であるように
神秘だと感じさせるものは、言葉だけだ。
・没文
陸がない未来。海にそびえる800階建のビル。
人はワーコンで物語をつくり、それを消費して一生を終える。
「虚構の枠を借りて本音を打つ、真実をそこにこめる、と言ってたかな、そういうのを小説だって。」
「人間は夢を見るのをやめたんだ」
・跳文
兄弟
サイメディック
狂わせた一文
言葉で頭がおかしくなった兄
「小説を味わうのは、内容というよりもそのスタイル、文体を味わうことなのだ。」
ワーカムモデル9900
あの一文を発見する→鳥肌がたった…
・栽培文
ある樵(きこり)とその娘のお話。
この樵の男は、言葉の森の言葉を切り取って売り、それで食っていた。男の娘は言葉を愛し、言葉を育てる才能があった…
言葉は自分専用のプランターで育てなければならない。この時代の人は、それで意思伝達を行う。口で言ったり手で書いたりしなくても、このポットがあれば意思伝達ができるが、言葉を使うならこのポッドを離すわけにはいかない。
かつてコンピュータがあった。コンピュータによって言葉(もはや呪文のようなもの)が増殖し、世界は滅びた。
消えた言葉はどこへ行くの?
言葉に寿命はあるのかしら?
娘は父に尋ねる。
「言葉には二種類あるのだと、娘は気づいた。いつでも出せる言葉と、ある気持ちが生じさせた、そのときだけのものと。」
複雑な気持ちを表現するのは、一言ではできない。言葉自体に気持ちを込めることはできない。言葉はただそこにあるだけ。
読む人に気持ちを汲んでもらうには、言葉自体に意味を込めることは不可能だということを前提にして、言葉を組み立てないといけない。気持ちは言葉の組み立て方や生まれ方に宿る。そしてそれはとても難しいことなのだ…
・戯文
ワーカム、万能著述支援システム
世界の虚構性について
・乱文、碑文
段落なし!
私は、これは人が勝ったのだと思いたい。
言葉で世界を管理しようとした存在は、増殖した言葉で(呪文)によって崩壊する。
言葉によってできていた世界は、言葉が崩れると同時に崩壊する。
言葉の力によるエントロピー増大を、もはや止めることはできない、崩壊す 326621223E212446246A2123……
一番最後の「我、勝てり」
鳥肌……やばい……
誰のレビューも感想も解説も見てない。見当はずれのことを書いてたらどうしよう…と思うけど、それはそれで、そこまでの理解力だったということで、潔く散る。よし!