CF班

まる子ムの生息地です。本読んだりゲームしたり。

ぼくらは都市を愛していた/神林長平/2012

「書くという行為は、祈りだ」
綾田ミウ情報軍中尉の綴る戦闘日誌に書かれた言葉で、物語ははじまる。

デジタル情報を破壊する『情報震』という現象が発生した現代社会。世界大戦が勃発し、人類は絶滅の危機に瀕していた。
『情報震』の正体は何なのか? 観測を任務とする情報軍のミウは、消息不明の双子の弟カイムに宛てた戦闘日誌を綴りながら、任務を全うしようとする。



めちゃくちゃ面白かったんですが私の文章作成能力ではあらすじ書くの無理でした。読んでくださいとしか言えない作品が多すぎるよ神林長平
本当に最高でした。

〈都市は言葉を失った〉
空はどこまでも青く澄んでいて、見ているとなぜだか泣きそうになる。
今にして思えば、あのブルーグレイの空の色は、空中を渡る無数の通信波や放送電波によるもの、すなわち電磁波に満ちた空の色だったのだ。電磁波を使った人間のおしゃべりが青空を湿気のあるグレイにしていたのだろう。
今はだれも語らない。都市は沈黙している。まったく静かだ。


情報保全のために都市自体は完璧に維持されているが、人がまったくいなくなったトウキョウを描写した文章。

私が泣きたくなるのは、ここに広がる景色のどこにもヒトの姿が無いことではなく、これはもう都市ではない、都市は死んだのだということ、その事実に気づいたからだ


こう続く。

都市にとっての人は血液であって、人がいなくなれば活動を停止してしまう。


話はカイムの回想(?)を交えて進んでいくように見えるのですが、実は回想などではなく!? 
時間の概念すらない世界に混乱させられます。

真の世界とは、人間の感覚や理解を超えて広がっていて、そこには、因果関係も時空もエネルギーも物質もない、あるいはそれらがみんなごった混ぜに存在する、混沌の場で、わたしたち人間は、そのごく一部を意識し、意識することで、いわゆるわたしたちの小さな〈現実〉を生み出し、その仮想的な世界、真の世界とはかけ離れた、遠いところで生きているのだ。


これにつきる話だった。


最後に、主人公2人の名前の由来が語られるのが鳥肌でした。

未有と皆無

すごい。