CF班

まる子ムの生息地です。本読んだりゲームしたり。

ライ麦畑でつかまえて/J.D.サリンンジャー/1964

 

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)

 

 

おおざっぱにいうと、世の中すべてがいやな中二病ホールデンくんが、高校を退学になり、寮を飛びだして家に帰らずニューヨークの街をさまよい、いろんな人に会って、最終的に家に帰る話です。

 

私は本を読みながら「これは」という文章を、自分があとで読み返すためだけに丸写ししながら読み進めていくのですけど、本著は書き写した文字が1万字を超えました。たぶん、ホールデンのだらだらとした口語調の文体のせいです。でもそれを抜きにしてでも、これは一生忘れたくないな、という文章がいくつも出てきて胸がいっぱいになりました。

そして思い出しました。高校のとき、はじめて本著を読んだときにも全く同じ箇所を書き写しているわ!と(笑)

そのひとつが、物語の終盤で、ホールデンの数少ない理解者であるアントリーニ先生がいう台詞です。

退学になってしまったホールデンに、なぜ知識が、とくに学校教育が必要なのかを説いています。

 

いったんそのヴィンスン先生のたぐいを通りぬけてしまえばだ、その後は、君の胸にずっとずっとぴったり来るような知識に、どんどん近づいて行くことになる──もっとも、君のほうでそれを望み、それを期待し、それを待ち受ける心構えが必要だよ。何よりもまず、君は、人間の行為に困惑し、驚愕し、はげしい嫌悪さえ感じたのは、君が最初ではないということを知るだろう。その点では君は決して孤独じゃない、それを知って君は感動し、鼓舞されると思うんだ。今の君とちょうど同じように、道徳的な、また精神的な悩みに苦しんだ人間はいっぱいいたんだから。幸いなことに、その中の何人かが、自分の悩みの記録を残してくれた。君はそこから学ぶことができる──君がもしその気になればだけど。そして、もし君に他に与える何かがあるならば、将来、それとちょうど同じように、今度はほかの誰かが、君から何かを学ぶだろう。これは美しい相互援助というものじゃないか。こいつは教育じゃない。歴史だよ。詩だよ。

この先生のことばは衝撃すぎて本当に…読んでほしいです。全部引用したい勢い…P292〜296です。

 

あとは兄弟たちとの関係には終始胸を締めつけられました。ホールデンは妹のフィービーをとても大切に思っていて、死んだ弟のアリーのことも大好きだったのだと伝わってきました。