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まる子ムの生息地です。本読んだりゲームしたり。

中野信子/ヒトは「いじめ」をやめられない/2017



テレビのコメンテーターなどでおなじみの脳科学者中野氏が「いじめ」を脳機能の視点から解説する。はみ出し者を排除したり、制裁を加えたりする行為には快感が伴う。それは脳内で「正義を執行した」という快感物質が分泌されるため。「いじめ」は人間の脳に備わった、種を存続させるための機能である。ネットの炎上はなぜ起こるのか。小中学生が、いじめている相手を死ぬまで追い詰めてしまうのはなぜ? 「いじめ」が脳の機能なら、人間はその束縛から逃れられないのか。



【感想】
こういうのは話半分ぐらいに読んでおくのが安全だと個人的には思っていますが、内容はスリリングでとても面白かったです。

・個人の道徳観が集団の正義に乗っ取られる

はっとさせられたのは、「人間は集団になると個人の道徳観が薄れる」という部分です。
ひとりで冷静に考えたら「これは駄目だよな」と思うようなことでも、集団の中にいるとその考えが「集団の正義」に乗っ取られてしまう。しかも本人には自覚がないまま……。
集団の中ではいつもの自分じゃなくなる。そしてそれは努力してどうこうなるものではなく、人間の性質なのだ、ということらしいです。

ネットにおける炎上も、「いじめ」とよく似た構造だということです。正義を振りかざし、個人を叩きのめして承認欲求や達成欲求を充足させる。しかも匿名性が高いから報復の心配が少ない。SNSの炎上は、これらの理由によって簡単に起こる。
人間の性質は簡単には変わらないけど、人間をとりまく環境やツールは爆速で変化している。人間は新しいツールを使うことで、自らの本性を積極的に暴いている。匿名性を盾にして……(感想文)要するに、システムの構造が炎上を発生させやすいということ。人間がいきなり性悪になった訳ではない。

・似た者同士が憎み合う

中学や高校では、合唱コンクールの時期に「いじめ」が発生しやすくなるという話が書いてありました。一致団結して上達しようという共通の目標の中、うまく歌えない子やまじめに取り組まない子を攻撃する方向にクラス全体の力が働き、合唱コンクール本番が終わったあとでもその傾向が続いて「いじめ」になっていく……。

同性、同じような趣味嗜好、似たような年収、家庭環境……このような類似性の高い集団において、「いじめ」はより起こりやすくなるようです。

さらに、日本は「同調圧力」が強い国民性。
要するに、出る杭は打たれる。似た者同士の中に、少しでもなにか目立つものを持っている人がいたら、たちまちその人に「妬み感情」を持つことになる。

悩ましいのは、多くの人が、団結がいじめを生むし、愛情が強いほど攻撃的になるし、仲間を大切にすることと戦争が実はリンクしていることを認められないことです


はぁ~~~~面白かった!
でも次はもうちょっと明るいやつ読も。